安全確保の考え方は時代と共に変遷してきました。
人が機械・設備を使用し始めた時代は、人の注意力・判断力だけに依存しており、この段階を「Safety0.0」と呼んでいます。その後、機械システムを安全に使用できるように設計するという機械安全の考え方が体系化され、隔離と停止で安全を確保する段階を「Safety1.0」と呼んでいます。そしてIoT、AI、ビッグデータ、クラウドといった技術革新が人と機械の共存を可能にし、環境もつなぐ(協調)ことで安全を実現しようという段階を「Safety2.0」と呼びます。
協調安全 :人と機械と環境が情報を共有することで、協調して安全を実現し安全性と生産性の両立を図ること
Safety2.0:ICT技術を用いて協調安全を実現する技術的手段
協調安全/Safety2.0の技術を活用することで、従来の機械安全だけでは難しかった安全性と生産性を両立し、人が安心して安全に働くことができます。
危険な機械システムの関係をライオンに例えて、人と危険源の関係を下図で説明します。
ライオンのみが存在し、人が存在しなければリスクはありません。人とライオンが同じ領域に存在しており、危険回避を人の注意力のみに頼り、ケガをしないようにしている状態が「Safety 0.0」です。ここには常に大きなリスクがあり、いつ事故が起きてもおかしくない状況です。
次に、危険なライオンを檻の中に閉じ込め、人から隔離することによって安全を確保するのが「Safety 1.0」ですが、非定常の状態として柵の中に入っての作業時にリスクが残存します。
そして「Safety 2.0」とは、十分なリスクアセスメント、ならびに新たな安全安心方策を実施した上で、ライオンを再び檻から出して、危険源と人が同じ環境で共存させようとする技術のことです。
Safety 0.0やSafety 1.0は、主にモノづくりやFA(ファクトリーオートメーション)の現場における産業事故の撲滅と安全の実現に貢献してきました。こうした現場では多くの機械や設備を固定化できるからこそ、Safety 1.0による隔離と停止の原則を適用した上で、Safety 0.0に基づく人の注意・判断力によって安全を構築することができていました。
しかし社会全体を見渡すと、こうした現場は限定され、多くの現場ではモノを固定できずに人とモノが錯綜しています。
典型的なものとして建設現場があります。建機が縦横無尽に動き回るすぐそばで、多くの作業員が働いています。Safety 2.0の最大の特徴は、Safety 1.0に基づく隔離と停止の原則が適用困難な分野に活用できる点です。実はそうした分野は建設以外にも、農業や医療・介護・物流・交通・インフラ、食品など多く存在します。
こうした背景から人とモノと環境が情報を共有して安全を実現するSafety 2.0が今後、多くの分野の安全構築に貢献していくことは間違いありません。